【最高のデビューアルバム】『Noel Gallagher’s High Flying Birds』を振り返る。

先日発売されたノエルのベスト盤『Back The Way We Came Vol.1 (2011-2021)』が全英1位を獲得した。

相変わらずの人気っぷりですね。

そんなソロキャリアの始まりは、さかのぼること2011年発売の『Noel Gallagher’s High Flying Birds(ノエル・ギャラガーズ・ハイフライング・バーズ)』です。

OASIS脱退から2年を経てリリースされたこのアルバムを、本日は振り返りと共に語っていきましょう!

先に動いたBeady Eye

少し記憶を巻き戻してみよう。

2009年8 月のOASIS分裂後、先に動きだしたのはノエルを除く4人のメンバー。

騒動から1年と少しが経った頃、1枚の騒がしいシングルがリリースされた。

まるでリアム・ギャラガーが足で鍵盤を踏み倒しながらリトル・リチャードごっこでもしてるかのようなロックンロール。

「Bring The Light」と名付けられたその曲を演奏するのはBeady Eyeという新人バンドだ。

そう、マンチェスター史上最高のバンドから枝分かれしたノエル以外のメンバーは、Beady Eyeと名を変えて夢の続きを追った。

そして、翌年の2月には1stアルバム『Different Gear, Still Speeding』をリリース、8月にはサマーソニックで来日し更にその2週後には単独来日を果たした。

僕もライブに足を運んだが、いずれも見応えのあるパフォーマンスだった。

待望のソロデビュー

それではもう片方の別れ道はどうなったのか?

Beady Eyeがサマーソニックで来日する少し前の7月、ノエルはロンドンで記者会見を開いた。

当然OASIS分裂の真相についてもアレコレ聞かれる事にはなったが、10月17日にいよいよソロデビュー作『Noel Gallagher’s High Flying Birds』がリリースされる事を明らかにした。

なおこの会見でノエルはOASISの脱退を後悔し、残りたった2本のギグをこなしツアー後に話し合えば解散を避けれたかもしれないと語っている。

その翌月、アルバムからの先行シングル「The Death Of You And Me」がドロップされた。

OASISでは試されないような管楽器が入り込むアレンジで、当時「遂にノエルはソロアーティストになるんだ」と感じたことを覚えている。

ただ、この1曲を聴くだけでもソロになったノエルは凄いことになると容易く想像できた。

『Noel Gallagher’s High Flying Birds』の全貌

Beady Eye来日の余韻と共に夏は過ぎ去り、涼しさが寒さに変わろうとする10月、『Noel Gallagher’s High Flying Birds』は満を持してリリースされた。

当然僕も発売日にタワーレコードで購入し、小学生のようなワクワク感を抱き帰宅を急いだ。

それではこのアルバムを紐解いてみよう。

Everybody’s on the Run

アルバムのオープニングを飾るのは、愛をテーマとしたメッセージ性の強い「Everybody’s on the Run」。

静と動が巧みに交差し、ノエルの感情的なボーカルがグイグイと曲を引っ張っていく。

特に後半のストリングスが強調される場面は、聴き手を短編映画の中へ引き込んでいくような錯覚さえ起こす。

美しい曲というのは、時として聴き手に情景を与え、その意味を理解する間もなく感動的に胸を締め付けていくんだよなぁ。

男女の出会いをユーモアたっぷりに描くMVには米国のドラマ「The OC」などで有名な人気女優ミーシャ・バートンが出演し、ノエルはタクシーの運転手役を演じた。

ちなみにノエルは当時も今も運転免許は所有していない。

Dream on

力強いドラムビートに合わせた行進曲のような「Dream on」。

シンプルなメロディーと歌詞はライブの盛り上げに一役買う。

アルバムからの4枚目のシングルにも選ばれた。

2012年5月25日に来日しミュージック・ステーションに出演した際にはこの曲を披露している。

MVだが、今度はボクシングのレフェリーを演じた。

If I Had a Gun…

OASISで言う所の「Wonderwall」のような位置付けになりそうなこの曲は、英国では3枚目のシングルとなり米国においてはアルバムからの先行シングルとして発売された。

元々は英国でもこの曲がリードシングルとなる予定だったが、OASIS色が強いという理由から「The Death of You and Me」に変更された。

曲の完成度は高く、ノエルのボーカルパフォーマンスも文句ナシで拍手を贈りたくなります。

この情熱に満ちたノエル渾身のラブソングを、アルバムのハイライトとする人も多いのではないだろうか。

結婚式場にカウボーイが花嫁をさらいに来るMVは、それなりの見応えはある。

残念ながらノエルが演じたのはカウボーイではなく神父。

余談だが、この年の6月にノエルは長年のパートナーであるサラ・マクドナルドと結婚式を挙げた。

The Death of You and Me

アルバムからの第一弾シングル。

ロックでもポップでもなく、ましてやジャズでもない不思議な世界観を持つこの曲は、何処か懐かしい雰囲気さえも感じる。

これも愛がテーマの曲なのだが、愛する人と自由を求め逃げようといったことが歌われている。

おそらくそのテーマに基づいて作られたMVで、ノエルはウェイトレス役の女性をプールに突き落とすが、こういうシーンは演技というより素のノエルで演じれるのかもしれない。

そして、このMVでのノエルの役は……ただの客だ。

(I wanna Live in a Dream in My) Record Machine

このアルバムには元々OASIS用で書かれた曲が幾つか存在するが、これもその1つである。

アルバムでもっとも爽やかなミドルテンポであり、ポール・マッカートニーのテイストが散りばめられたような良質なポップスだ。

AKA… What a Life!

英国ではアルバムと同時発売の第二弾シングル。

これぞノエル・ギャラガーの新境地、最高にスリルのある興奮と感動がここには詰まっている。

永遠に続いて行きそうなダンスビートに乗ってノエルは「人生分からないぜ!!」と繰り返す。

まさにソロキャリアという冒険の始まりを歌ったかのようなナンバー。

MVには親友のラッセル・ブランドが出演している。

また、「If I Had a Gun…」「The Death of You and Me」、そしてこの「AKA… What a Life!」はMVが3部作となっており、いよいよここで完結を迎える。

このMVの最後のシーンでノエルは車を運転するが、まるで「33分探偵」のようなハリボテ感である。

Soldier Boys and Jesus Freaks

ザ・コーラルのようなサウンドで曲は進行し、間奏ではギターではなくトランペットが強調される。

アルバムではどちらかと言えば地味な位置付けになるが、全体の流れには調和している。

AKA… Broken Arrow

しっかりと痒い所に手が届いてくるメロディーライン、もはやノエルの職人芸である。

個人的には他のシングルカットされた曲に引けを取らない出来きだと感じる。

「ブロークン・アロー」とは、ノエルが尊敬してやまないニール・ヤングの牧場の名前だそうだ。

(Stranded on) The Wrong Beach

旅をテーマに歌われたこの曲もまた素敵なメロディーで組み立てられている。

ノエルとしてはこういうタイプの曲もOASISで試していきたかったのかもしれない。

Stop the Clocks

OASIS時代から長い間寝かされてきた「Stop The Clocks」がとうとう陽の目を浴びる事となった。

書かれたのは何と2001年で、何度かOASISのアルバムに入る予定もあったが結局どこにも収まることはなかった。

おそらくノエルとしても思い入れの強いこの曲は、アルバムを締めくくるのに最もふさわしいだろう。

やっと陽の目を浴びた喜びを爆発させるかのように、曲のラスト1分間は歓喜のギターソロと共に終焉に向かっていく。

A Simple Game of Genius(日本盤ボーナストラック)

メロディーは派手に起伏する事はなく、わりかし淡々と進むシンプルな展開。

7分を超えるので、人によってはやや退屈に感じるかもしれない。

The Good Rebel(日本盤ボーナストラック)

「The Death of You and Me」のB面でも収録された。

コーラスのメロディーが印象的な爽やかな曲調である。

僕的には推しの1曲である。

ライブでも披露されていた。

ノエルが出会った言葉

ノエルは今作のレコーデイングでロサンゼルスに滞在していました。

その時たまたま通りかかった劇場の前である言葉に出会います。

“It’s Never Too Late to Be What You Might Have Been”

”なりたかった自分になるのに遅すぎるなんてことはない”

という言葉です。

自分がソロアーティストになるのに遅すぎるなんてことはない。

そう思えるキッカケになったそうです。

そしてそれは誰にでも言えることで、やりたいことがあるなら今からでもやっていいんだ。

そのようなメッセージを残しています。

いかがだったでしょうか?

本日は以上となります。

ありがとうございました✋